オーストラリアと聞くと、真っ先に浮かぶのは青い海、広がる大地、コアラやカンガルーのイメージかもしれません。
でも、オーストラリアを「色」で表現するとき、多くの場面で目にするのは 緑と金(黄色) の組み合わせです。
スポーツのユニフォーム、お土産品、国際大会の装飾など、あらゆる場面でこの配色が用いられています。
では、国旗には赤・白・青が使われているにもかかわらず、どうして「緑と金」がオーストラリアの象徴になったのでしょうか?
もくじ
オーストラリア、緑と金のルーツ:国花「ゴールデン・ワトル」

ワトルとは?
ワトル(wattle)は日本語で「アカシア属(Acacia属)」 の植物を指す総称。
オーストラリアには多数のワトル種が自生しています。
その中で Acacia pycnantha(ゴールデン・ワトル) が国の花として選ばれています。
このワトルは、鮮やかな黄色の花を咲かせ、年によっては 8メートル近くまで成長する低木〜小高木。
花が咲くとき、緑の葉と黄金色の花が一体となって風景を彩る姿が「緑と金」の配色を強く印象づけます。
(参照URL:Australian floral emblem-Australian department of the prime minister of cabinet)
国花に至るまでの道のり
ワトルがオーストラリアの正式な国の花として宣言されたのは1988年。
ワトルを国のシンボルとして扱う動きはずっと以前からあり、1890年代後半にはワトルを讃える運動(「Wattle Clubs”」や「ワトル・デー」など)が州ごとに存在していました。
(参照URL:Floral Emblems-Australian Plant Information)
ワトルがオーストラリア人にとって「オーストラリアを象徴する国花」として受け入れられたのは、植生・自然観との親和性の高さゆえでしょう。
緑と金は「なんとなく好きな配色」ではなく、自然の中に根ざした象徴なんですね。
オーストラリアのスポーツの場から「緑と金」が公式認定へ
The #YoungSocceroos XI that kicked off our FIFA U-20 World Cup Chile 2025™ campaign 💪 #U20WC pic.twitter.com/ZNxAlr0fv9
— Football Australia (@FootballAUS) September 28, 2025
スポーツで広まる緑と金
オーストラリアのスポーツ史を見ると、緑と金(黄色)の使われ始めは19世紀後半に遡ります。
1899年、クリケットのオーストラリア代表チーム(The Ashes シリーズ遠征時)が、従来の白いユニフォームに加えて緑と金のキャップやブレザーを着用したのが最初の記録。
さらに、1908年、オーストラリアのクリケットチームで、緑と金の組み合わせが正式なチームカラーとして採用されました。
1908年のロンドンオリンピックでは選手団のユニフォームに「Green and Wattle(緑とワトル(金))」という名で用いられ、それ以後この配色が採用されるようになりました。
他のスポーツも追随し、サッカーは 1924年、ラグビーは 1928〜29年 あたりから緑と金が使われ始めます。
こうして「緑と金(黄色)=オーストラリア代表カラー」というイメージは、スポーツの場を通じて国民・国際的な認知を拡大しました。
(参照URL:Why Does Australia Wear Green and Yellow? The History Behind the Colors)
公式カラーとしての認定(1984年)

長く慣習として使われていた緑と金(黄色)ですが、正式に認められたのは 1984年4月19日でした。
ガヴァナー・ジェネラル(オーストラリアの国家元首であるイギリス国王の代理人)が、当時の首相ボブ・ホークの助言を受けて国の「ナショナルカラー(National Colours)」として宣言しました。
この宣言をもって、オーストラリアは「緑と金」を、主にスポーツや国際舞台で使用される象徴色として正式に採用しました。
(参照URL:National colours of Australia-Wikipedia)
宣言では、デザイン上「緑と金は間に他の色を挟まず、並置する」ことが規定されています。
また、具体的な色指定として、PANTONE® 348C(緑)、PANTONE® 116C(金) が国の標準色として定められています。
(参照URL:Australia’s national colours-Australian department of the prime minister of cabinet)
この1984年認定は、スポーツ界・市民社会にとって「慣習を公式に裏付けた」節目であり、それ以後、あらゆる国代表チーム・公式行事でこの配色が一層強調されるようになりました。
オーストラリアの緑と金が示すもの:シンボル性と意味
緑と金には、オーストラリアらしさを感じさせるさまざまな象徴性が込められています。
緑(Green) 森、ユーカリ、草原、農地などの自然緑。オーストラリアの植物、生命力を表す。
金(Gold)
日差し、砂、麦穂、鉱物資源(とくに金山)、豊かな収穫。ワトルの黄金色の花。
政府資料でも、金は「鉱物資源・砂浜・収穫物」など、緑は「森林・牧草地・農地」などと解説されています。
(参照URL:Australia’s national colours-Australian department of the prime minister of cabinet)
また、緑と金は、オーストラリア人にとって「誇り・団結感」を喚起する色でもあります。
スポーツの場でサポーターが緑と金を身にまとい、一体感を作り出すのはその好例でしょう。
観光者視点で楽しむオーストラリア「緑と金」

現地で意識すると面白い「緑と金を感じる体験案」をお伝えします。
ワトルの季節を楽しむ
ゴールデン・ワトルは主に 8〜9月頃に咲き始め、春の兆しとされます。
もしこの時期にオーストラリアを訪れるなら、公園や国立植物園などでワトルの花を探してみてくださいね。
さらに、9月1日 は「National Wattle Day(国民ワトルデー)」として、ワトルを身につけたり、花を飾ったりして祝う慣習があり、全国でイベントが開催されます。
【参照URL】ワトルの日-Wikipedia
スタジアム観戦で 「緑と金の海」 を楽しむ
クリケットやラグビー、オーストラリアンフットボールなどの会場には緑と金の応援グッズやユニフォームを身に着けた観客たちが集います。
テレビや写真だけでは感じられない「色の圧」があります。「色で国を感じる瞬間」をぜひ感じてみてください。
お土産・デザインをチェック
お土産屋や空港のギフトショップ、スポーツグッズ店、ミュージアムショップなどでは、緑と金を基調にした Tシャツ、マグカップ、キャップなどが並んでいます。
「色をテーマにした旅の記念品」として選ぶのもおすすめです。
【関連記事】シドニー国際空港で買えるおすすめオーストラリア土産
写真テーマとしての 「緑 と 金」
旅のフォトテーマとして、「緑と金の対比」を意識して撮ると面白さが出ます。
黄色いワトルの花と木々の緑、夕陽や日差しの金色と木陰の緑のコントラストや、スポーツ観戦時のサポーターファッション……などなど
「ただの観光写真」ではなく、オーストラリアのアイデンティティを映す一枚になります。

ちなみに、シドニーのフェリーも「緑と黄色」なので、オーストラリアのナショナルカラーだ!と思ったのですが、2005年、当時の運輸大臣の発表によるとこれは「クリーム色」だそうです。
まとめ : オーストラリアの緑と金が語る国の物語

緑と金は、オーストラリアを象徴する 「ナショナルカラー」
ユーカリの葉やゴールデンワトルに象徴される自然、そして国の歩みやアイデンティティそのものを映しています。
スポーツのユニフォーム、シドニーのフェリー、さらにはお土産品にまで息づいているこのカラーは、訪れる人に「ここはオーストラリアだ」と一目で伝えてくれるサインでもあります。
街中や自然の風景に散りばめられた「緑と金」を探してみるのも旅の楽しみのひとつ。
歴史や背景を知ってから見ると、日常のワンシーンがぐっと奥行きのある体験へと変わります。
次にオーストラリアを訪れるときは、ぜひ「緑と金」を意識してみてくださいね。